【きっかけ】
以前からブログやポッドキャストを通じて著者の論に触れていて、
いちど本という形で読んでみたいと思っていたため。
ちょうど最近、現在の社会問題を総覧的に扱っていてかつコンパクトな新書が出ていて、しかも図書館に入っていたため。
【感想】
ブログはまだしも、一般視聴者向けのポッドキャストを聞いた限りでは複雑な事象を非常にわかりやすく説明するひとだ、という印象があったのだけど、
この本については、一定の難解さが残されていたため、本当にゆっくりじっくり読み進めることになった。
(あとがきを読むと、それは確信犯であることが判る)
しかし、ひとつひとつの論点に対して
・どこが「難点」なのか
・どう解決すべきか(という主張)
・それを述べた根拠と議論上の立ち位置
はほぼ明確にされており、
さらに自在に抽象度を操り(ここが凄い)、必要に応じて時間や空間を超越して論じるスタイルによる切り口は鮮やかでハッキリしている。
社会システム論というと、個人的には大学1年次に、ウォラーステインを通読しようとして挫折した思い出があるのだけど(…)、
それに比すればやっぱり判りやすい…んだろうなぁ、、と思わざるを得ない。
また日米構造協議のあたりは個人的に調べた経験があったためわかりやすく感じた。
それを考えると、これが「わかりにくい」とすれば、それは単に著者と読者の前提知識・事前思考蓄積量の圧倒的な差を埋める解説を、キリがないから端折ったために生じたもの、と言うことができるのかなぁ、と思ってしまった。
正直、いちど通読しただけで理解しきれたとはとても思えない。
以下にピンと来たポイントをメモして残しておこうと思う。
【印象に残ったこと】
(※私自身の考えとは関係なく、本文の引用と趣旨主張のメモ)
■第一章 人間関係はどうなるのか
・「ウォラーステインは二〇年前に、覇権国家ないし帝国の盛衰を「製造業→流通業→金融業」という転換で記述しています。」
→現在、これは米国にあてはまる。つまりこの流れは予想できた。
・憲法9条問題:軽武装対米依存から、重武装対米中立へ、9条は変える必要あり。
■第二章 教育をどうするのか
・「インターネットの最大の問題は、「匿名サイトで事件に巻き込まれる可能性」よりも「オフラインとオンラインとにコミュニケーションが二重化することによる疑心暗鬼」とそれがもたらす日常的コミュニケーションの変質」
・世論=サイレント・マジョリティ、クレーマー=ラウド・マイノリティ(のケースが大半)
・「政治家からの圧力に屈することとクレーマーからの批判的発言にびくびくすることは、反民主的・反平等的であるという構造において、同じ」
・「緊急避難的には<システム>の過剰に見える導入は、たとえば生徒同士や生徒と教員の間の暴力沙汰に警察の介入を求めることも含めて不可避ないし不可欠」butシステム依存でなく「<生活世界>の再構築」必要
・「本当にスゴい奴」とは?:人間はエゴイスティックな人間に凄さは感じない。初期ギリシア(プラトン)の言う「ミメーシス(感染的模倣)」を周囲に生じさせるか否か
・感情的・感覚的な幅は他人を幸せにし、さらにそれを通して自分を幸せにする為に必要(b/c.他人の置かれている状況や、それが彼らに与える影響を理解できる)。
・↑は、知的な幅とは違って成人後は容易に変えられない。
・生育環境の善悪による「階級的ハビトゥス」はとっくに生じているが、社会的包摂に満ちていれば、「生まれの偶然」がもたらす不均衡を予防できる
■第三章 「幸福」とは、どういうことなのか
・人々がどんな選好構造を持つかでパレート最適が社会的にも反社会的にもなる
→市場が反社会的にならない為に:人々に一定の価値観(内発性)を埋め込む必要
・人の為す区別は必謬性をもつ。b/c.@境界設定の恣意性、A因果関係の恣意性
・(↑Aとは?):「無限に続き拡がる因果の中から、人は恣意的に一部を切り取り「あれは良かった」「これは悪かった」と思いがちです。でも、「世の摂理は人知を超える」。人知を超えた時間の中で、善は悪を生み、悪は善を生む」
・自殺の要因の因果性(実証分析):@病気や怪我→A会社を辞めるか休養→B収入が絶たれる→家族的・地域的・会社的人間関係から見放される→D相談相手のいない状況で生活にいきづまる
・ネオリベ(市場原理主義)=小政府&小社会
新自由主義=小政府&大社会(包摂)
・厳格なゾーニングで隔離すると不安増・神経質に→多様なものの共生を
■第四章 アメリカはどうなっているのか
・(オバマ演説の上手さ):Youは呼びかけられた人全員が対象、Weは「黒人」「女」「リベラル」などの属性が対象となる
・高度技術(ICT・バイオ)は「集積効果」の実現可能性をもつ(b/c.非同化主義)米国が優位
・日本の官僚内閣制がダメになった理由:地域共同体の空洞化+党本部機能(=地域からの吸い上げ)壊滅
・米軍基地を許容し続けるのは「アリ」(butいつでも重武装対米中立化できる準備が必要)
・↑のために必要:@米国を怒らせない政策Aアジア諸国を怒らせない政策B憲法改正・文民統制のための民度上昇対策
・現代のリスクはすでに予測不能・計測不能・収拾不能(原子力、遺伝子組み換え、金融...)
■第五章 日本をどうするのか
・法の専門家不在・同害報復(原初的社会)→社会の複雑化→何がどれくらいの罪かの合意が困難に→法専門家分出
・就職:「仕事での自己実現」が過剰に追求されている。しかもその自分探しは、ただのカッコつけに終わっている場合が多い(カッコいいと思われたいからカッコいい企業に就職)。
・近代は再帰的(選択の前提もまた選択されてる)。これに気づかない(=モダン)→気づく(=ポストモダン)
・「市民が、想像の共同体である国家に直接コミットするということは、社会学的にはあり得ません」
→必ず何らかの装置が働いている。日本は「近接性」
・「宗教〔米〕であれ階級〔仏・伊、英〕であれ血縁ネットワーク〔中・ユダヤ〕であれ、承認を与えてくれる感情的安全の場がなければ、世界貢献へのチャレンジは(一般には)あり得ない」
・農業の高齢化・耕作地放棄→専業農家への補助金政策が必要(b/c.土地1単位当たりの収益性が農業は低いから)
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新書にしては不親切かも。
多少の事前知識があれば・・・。
援交率の高さと自殺率の高い地域が一致していた、という指摘は凄かった(p.133)
現代社会を包括的に捉え複雑な事象を紐解いている
初ミヤダイの方はご注意





あるある
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